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~古代への回帰~  現代音楽とチェンバロ vol.3  


フランスに渡って、一年と少したった頃だったと思います。


現代音楽やりたい熱がとうとうぱんぱんになったのか、 ある日突然、レッスン室に行き、ロッカーで何かを探している師匠に、 わたし現代音楽やりたいです と告げていました。 はじめは、今まで自分が奏でた事のない音の響きの世界がただただ新鮮で、

その世界に驚き、そして発することに喜び楽しんでいました。

その後の専門課程のリサイタルでは、プログラムの中に、イタリアの作曲家、ペトラッシ(Goffredo Petrassi)のギターとのデュオ作品 ≪アリアス Alias per chitarra e clavicembalo (1977)≫ を選びました。

わたしがまだ現代音楽で頻発する拍子の変更、複雑な連符やリズムに慣れていなかったことも相まってか、アンサンブルが激難かしく、ギターリストと相当な時間をリハーサルに費やしました。

エマヌエル・バッハやスカルラッティの作品がプログラムを占める中、唯一の現代音楽の作品。

アンサンブルが難しく大変苦労した作品でしたが、リサイタルが終わる頃にはすっかり大好きな作品になっていました。

この頃より、現代音楽において求められる表現能力、繊細さ、読譜力などを、体感そして痛感し、現代音楽の奥深さ面白さにさらに惹かれるようになりました。

その後マスターに入ることになり、 何よりも面接がドキドキで、、 フランス人の友人たちに学長役をやってもらったり、 練りに練った想定問答を丸暗記したり、 廊下をブツブツと呟きながら歩く日々が続きました。 たくさんの方の応援と励まし、あたたかい協力のおかげで、マスターに入ることができました! 入ってからも講義でのフランス語のシャワーが尋常じゃなく、、脳みそが爆発しそうでした。。 話がそれましたが、 論文の準備をしていると、練習したい 練習していると論文が気になる そんな日々でした。

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(早朝に散歩したアパート近くのオランジュリー公園) 隙間の時間にたくさんの現代音楽の楽譜や資料に目を通すようになっていました。 楽譜を読んでいる時、練習している時、現代音楽に触れていると、

自分の中の原始的な部分を揺り動かされ、熱を持ち、内なるエネルギーの様なものが高まっていく気持ちになりました。 作曲された時代は、今自分が生きている瞬間に近づいているのですが、

何かもっとずっとはるか昔、人類が誕生した頃、古代からのエネルギーを感じ、もしくは古代へと原始的な時代へと回帰していく様な感覚でした。 このエネルギーが今もわたしを動かしています。

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(音楽院前の河は、夏には、ボートで水上散歩ができます。奥の建物が音楽院) 少しとんで、帰国後の話ですが、 ある時から、展覧会に行って気になった人の伝記を読む様になりました。 そしてその事が、たくさんのことを私に感じさせ教えてくれている気がしています。 それまでは、何か気持ちの良い日、良いことがあった日だけが、人生におけるいわゆる "良い日" であったり、"大切な日" だと、 この"良い日"というものが多い方が良い、多くしようと、 心のどこかで思っていました。 今では 気分の良い日、何もかも嫌になる日、希望を持つ日、悔しさでいっぱいの日、色んな毎日。 どんな日も愛おしく大切で、わたしにとってかけがえのない日だと感じるようになりました。 もちろん台風の真っ只中にいる時は、それは本当に心が痛くボロボロになり辛いのですが。。

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(大好きな町、ストラスブール。カテドラルから住んでいたアパートの方角を臨む)

こんな色々ある毎日の中に(から)、芸術が生まれてくるんだなと。 バロック時代、またどの時代に生きた作曲家演奏家音楽家も、

日々の暮らしの中でおこる心の動きの中で、創作し表現していたのだと。 そうわかっていたはずでしたが、 何か最近やっと音楽を生々しく感じるようになった気がします。

このエネルギーを感じながら、 今この時代をともに生きる人々が生み出す音の世界を表現していくことを、

これからも続けていきたいと思います。 これから先、わたしが生きる中にチェンバロはあってほしいけど、 宇宙や世界を広く大きく感じて 色んな世界に心を向けて その中でこれからもチェンバロを感じて表現していきたいと思います。

......

なんだかとりとめの無い話になってしまいました。

裏庭の家庭菜園のトマトがまだ緑色ですが、ずいぶん大きくなってきました。

収穫が楽しみです。 つづく … !?

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